次の受診の時に、その二歳半の男の子は、僕の顔をみながら、何か一生懸命に訴えている。はじめは聞き取れなかったが、どうやら「ななはっけ、ななはっけ」と言ってるらしい。意味がわからない。お母さんに聞いた。
お母さん「700系 って言ってるんです。新幹線の話です。」と
「ああ、そうかあ。新幹線の700系だね。よく知ってるねえ。新幹線好きなの?」
しかし、そうではなかった。
男の子は、おじいちゃんに、新幹線のオモチャを買ってもらった。大好きなオモチャで、毎日走らせて遊んで居た。それが数ヶ月前に壊れて走らなくなってしまい、親戚のおじさんなどが来るたびに男の子は「ななはっけ」を出すらしいが誰にもなおせないという。
先日の工具セット。「この先生はいろんな工具を持っている。この人ならなおせるかもしれない」と彼は思ったのだ。だから僕に「ななはっけ、ななはっけ」とうったえていたのだ。
二歳半の子に頼りにされて、吉永センセが張り切らないはずがない。昔のプラモデル少年のいじにかけてもなおしてみせなきゃ。
「そうかあ。じゃ先生がなおしてみるから持っておいで。」
お母さん「良かったねー。先生がなおしてくれるって。」
どんな故障かわからないけど、二歳の子のオモチャだ。何とかなるだろう。
そして、数日後。とうとう「ななはっけ」が僕のところへやって来た。男の子が大事そうに僕に手渡す。
そして僕は大変なことに気がついた。
続く
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