2013年1月11日金曜日

ななはっけ騒動 1

  ある日、診療中にスタッフが騒がしい。
「工具のドライバーは、どこにありますか」と、聞いて来る。
ネジをゆるめるのだというが、よく状況がわからない。
駐車場で何かあっている風なので、出てみた。

 すると、いつも診察にやって来る男の子、 
車の中で、運転席のお母さんの膝の上に立ってはしゃいだらしく、
車のドアの内側、乗ってからドアを引いてしめる「とって」に足を突っ込んではまってしまい、抜けなくなっている。大人なら絶対入らない場所だ。
お母さんは、「ドライバーかしてください」と車中から言っている
どうやら、とってを止めているネジをゆるめれば、足が抜ける状況らしい
結局、私のドライバーセットを出し、 
スタッフが窓越しにその子を抱っこした状態でドアを開け、
通りがかったよその子のお父さんの手を借りてネジをゆるめ、無事に足は抜けた。

 皆安心して、珍しい出来事にちょっと話題になったが、すぐに話に登らなくなった。
しかし後に、男の子本人はそうではなかったことを知る。
彼の中では、まさにその時から話は始まったのだ。

 私のドライバーセットは、何かの景品でもらったものだが、普通よりもやや多めにいろんな工具が入っている。
男の子はそれをみていた。そして、足が自由にならない状況で彼の頭にはひらめくものがあった。
その時は、男の子の目が光った事に気づいた者は、誰もいなかった。

続く

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